レトロな旧乾家住宅を訪ねて 

神戸市東灘区住吉山手5-1-30
”06/06/24 見学
旧乾家住宅は昭和初期の代表的邸宅建築。
六甲山の麓、阪急御影の閑静な住宅地にたたずむ。

設計した渡邊 節(わたなべ せつ)(1884〜1967)は大阪の綿業会館(重文指定)や大阪商船三井神戸支店ビルなどで知られ、和と洋の感覚を折衷した建築物に定評があり、旧乾家にもその特徴が十分に表れている。


乾家住宅正門


エントランス車寄せ。


ライオンの頭の噴水。


車寄せの高い天井、竹を組んだ網代模様が
描かれている。


淡黄色の柱が連なるスペイン風の
エントランス。



家族用の入り口。


執事・使用人の入り口。


来客用の正面玄関。


中は少し暗いが、来訪者の気持ちを
落ち着かせてくれる。


色調鮮やかな、素晴らしい
タイル画。


北側の正面玄関 ステンドグラスの扉を
内側から見たところ。

邸宅の主は海運会社「乾汽船」の創業者、乾新兵衛で、当時繁栄を極めた海運業で得た財力を見せつける建物とも言えよう。だが、この邸宅の保存は危機的な況に直面している。所有者が死亡した後、国に物納され、神戸市が買い取りをしようとしたが、市の財政難のため買収話は頓挫、1年更改で神戸市が委託管理を任されている状態が続いている。



階段の柱、手すりはチーク材を使いデザインは
イギリス風の彫刻で一木彫りだ 。
海運業である乾汽船は、船の神様である、広島厳島神社を奉る、
壁に掛かるタペストリーは安芸の宮島厳島神社・赤鳥居。
京都川島織物がまだ創業間もない頃の製作である。


このタペストリーは設計者の渡辺 節氏が新築祝いとして
贈られたもの。



南の海側にある窓から陽光が降り注ぐ。


暖炉。


椅子に座った、その目線の先は住吉海岸が
一望できた。


来客用和室。
阪神大震災以前には神戸に約560棟あった文化的価値の高い歴史的な建造物は約4分の1の約160棟が消失してしまったと言う。
旧乾家住宅は今まで以上に貴重な存在となった。


来客用クローク。


2階主人の間、扉の中は金庫。


2階浴室。


主人の寝室。


奥様の化粧部屋。


奥様用和室。


昭和の初期既に、ウォークインクローゼットである。


この窓の向こう蔵と隣接に日本家屋の建物があった。


サンルーム。
神戸湾の景色が窓一杯に広がり、
美しい風景を自分が独り占めしているような
ぜいたくな気分にさせる。

          旧乾家住宅。

所在地  ・神戸市東灘区住吉山5-1-3
建築年  ・1936年(昭和11年)構造・鉄筋コンクリート造2階建 一部木造
敷地面積・3,868u
設計者  ・渡邊 節
施工    ・竹中工務店
建物面積・本邸:約720u
       蔵:約48u
2階サンルームから中庭を望む。
上の3枚の写真は暖房用の排出口。
当時まだ珍しい集中暖房を取り入れるため地下に石炭を燃料としたボイラー室を置くなど、
先進的な建築だったことがわかる。
住宅の浜側の庭園紫陽花も終わりごろだった。
乾家住宅全景、右は正門、左は山側から見た裏側。
周りには白鶴美術館などがあり文化集積度の高い場所でもある。